元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
とにかく、お湯に布を浸して固く絞る。それをゆっくりとレオンハルト様の背中に触れさせた。
艶やかな肌が男性らしい筋肉を覆っている。肩甲骨の周りが盛り上がり、背中の真ん中に一本の線が現れていた。肩もほどほどに隆起しており、背中と絶妙なバランスを誇っている。
「レオンハルト様は、どうして姉を花嫁にしようと思ったのですか?」
無言だと間がもたないので何か話そうと試みた結果、このような質問を口走っていた。
「ん? ああ……一度会ったことがあってな。そのときの印象が強くて」
「どのような印象だったんです?」
たくましい体を拭きながら質問を重ねる。
「とにかく勇気があるな。貴族に対して堂々とケンカを売っていた。全然おどおどせず、毅然とした表情で。なんという無茶をする女性だと思ったよ」
あのときは、嫌がらせをされている女性を助けるというよりも、そんな卑劣な行為をする男を許してはいけないという気持ちが強かった。
けれど、短絡的な行動であったと言われればその通りで反論はできない。
「放っておけないという気持ちと、もっと無茶をする姿を見てみたいという気持ちが両方あるな。矛盾しているが」
レオンハルト様が低い声で笑い、背中が揺れた。