元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「で、どんな夢見てたんだ? お兄さんに教えてごらん」
「べべべべべ別に、ライナーさんが喜ぶような夢は見てません! 断じてっ!」
しまった、寝言を言っていたとは。自分がどんな声を出していたのかわからず、しかもそれを雑魚寝している兵士たちに聞かれてしまった。
消えてしまいたい……。
山型にして座った膝に顔を埋める。と同時に、深い深いため息が出た。
昨夜あんなことがあったせいだ。全部全部、レオンハルト様のせいだぁ。
彼は私が生物学上は女だということを、嫌と言うほど見せつけてくる。それが故意でないにしても、迷惑極まりない。
自分が女だなんてこと、忘れてしまいたい。胸の膨らみも、ひと月に一回必ず訪れる不快な生理現象も不必要なのだからなくなってしまえばいいのに。
「はは。純情青年も色々あるんだな。気をつけろよ、そんな顔でそんな声して寝てたら、男色の元帥閣下に襲われちまうぞ」
頭をわしわし撫でてくるライナーさんの手を払いのける。
「下品な冗談はやめてください! さあ、早く寝た寝た! 敵と衝突したら眠れなくなるんですからねっ」
「みんなを起こしたの、お前だっつうの」
「まあまあライナー大将、ルカの言う通りです。さあ、寝よう」
ライナーさんの部下たちがくすくす笑いながら、その場を収めてくれた。