元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「それにしても、色っぽい寝顔だったな。まるで乙女だった」
ライナーさんが自分の寝床に戻る間際にそんなセリフを残して行くから、内心どきりとした。
胸に巻いているさらしが緩んでいないか確認する。誰にもばれてはいないようだけど、これからはもっと気をつけなくちゃ。
鉄仮面でもつけて寝ようか……。一昔前の、全身を覆う鉄の甲冑を着て過ごすのが一番いいかもしれない。いや、それでは周りから余計に不審がられる。
そんなことを考えていたら眠れなくなってしまった。仕方がないので医務室へ行き、ごく軽い睡眠薬をもらって再び寝床に潜り込んだ。
次の日、私はレオンハルト様の執務室に呼ばれていた。
テーブルの上に海図を広げ、それをレオンハルト様、ベルツ参謀、アドルフさん、ライナーさんと私で囲む。
「偵察艦の報告によると、敵艦隊の第一隊がこの辺りにいるとのことです」
「ほぼ計算通りだな」
アドルフさんが海図の上に敵艦を模した船の模型をぽんと置く。ライナーさんが腕組みをしてそれを見下ろした。
「気になるのはその数ですな。全軍まとめてかかってくるというわけではなさそうだ」
ベルツ参謀があごに生えている髭をなでた。