元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「いきなし全軍投入するわけはないとしても、問題はどうやって他艦隊が動くかですよね。おそらく旗艦は一番最後に出てくるでしょうし」
レオンハルト様は艦隊トップでありながら後方で指揮をするということはしないらしい。自身も権力を笠に着て安全なところに隠れているようなやつらは嫌いだ、みたいなことを父上に言っていたし。
とにかく最前線に自ら出ていくのは世界中の艦隊を探してもレオンハルト様くらいのものだろう。敵は艦隊をいくつかに分けて攻撃してくるものと思われる。あっちの提督を乗せた艦は一番後ろで部下たちに守られているだろう。
「ここら辺は海流が複雑だからな。自然と敵が向かってくる方向はわかる」
「おっしゃる通りです」
アドルフさんがレオンハルト様の言葉にうなずく。
いくら海がだだっ広いと言っても、どこでも自由に通れるわけではない。潮の流れがぶつかるところ、渦を巻いているところと、船が通れない場所はあちこちにある。
「できるだけ犠牲を出さずに勝ちたいものだ」
独り言のようにそう零したレオンハルト様は、真剣な顔で海図を見つめる。まるでそこから回答を見出そうとするように。
「衝突まであと何時間くらいだ、ルカ」
「約23時間ほどかと」
両軍の速度と潮の流れから頭の中で計算し、答えを導き出すとレオンハルト様は満足げにうなずいた。