元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「よし。22時間後に各艦に作戦を伝達する。お前たちには決まり次第連絡する」
あまり早くから作戦を伝達すると、敵の偵察艦に知られてしまう恐れがあるということね。考えたくないけど、この艦の中に敵国のスパイがいないとも言い切れない。
「明日が待ち遠しいな」
ライナーさんの目が、今まで見たこともないくらい生気に満ちて輝いた。
私とライナーさん、アドルフさんで執務室を出ていく。レオンハルト様とベルツ参謀は、作戦について二人で話し合うということだ。
「ようやく戦えるんだな。腕が鳴るぜ」
「僕は気が重いよ。この辺りは潮の流れが独特だ。時間によっては変なところにいると渦に巻き込まれてしまう。気が抜けない」
ライナーさんとアドルフさんの会話を聞きながら、二人の後ろを歩く。敵との衝突を控え、兵士たちの間に緊張の色が見てとれた。
そう言う私も例外ではない。今までも軍に所属していたとはいえ、後方勤務しかしてこなかったので、戦地に居合わせるのは今回が初めて。
私にレオンハルト様の補佐役がきちんと務まるだろうか。そういった不安もあるけれど、ライナーさんが高揚する気分もわかる気がした。