元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
私は未だ、レオンハルト様の一面しか見ていない。彼が大艦隊をどのように指揮していくのかという点に大いに興味があった。
「僕は舵場に戻るよ。部下に任せきりじゃいけないからね」
アドルフさんが言う。
「はい。じゃあまた」
「俺も行くわ。じゃあな副官殿」
ライナーさんも、スキップしそうな勢いで砲撃手たちがいる船室の方へと消えていった。
「よし、私は……いつもの仕事を」
地味だけど、物資の管理も大事な仕事だもの。そう自分に言い聞かせて船内を歩いていると、とある兵士から声をかけられた。
「恐れ入ります、クローゼ少佐」
「はい?」
正面から挨拶をしてきたのは、灰色の髪とおそろいの色の瞳を持つ、おそらく私と同年くらいの若い男だった。
そういえばこの人、見たことがある。この前ライナーさんが夕食の後に宴会を開いていたとき、隅っこに座っていた顔色の悪い兵士だ。
「私はクリストフ・フォルカーと申します」
彼は私と目を合わせておき、すぐに視線をそらす。この焦点が合わないような目つきも、印象に残っている。左腕に縫い付けられた白地に十字のマークが、彼が衛生兵だということを表していた。
「少佐殿にお伝えしたいことが」
「何でしょう」
「できれば、人気のないところで」