元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

意外な言葉を聞いたようなレオンハルト様の顔を見て、急に恥ずかしくなった。

『好き』だなんて、私なにを言ってるんだろう……。

「さ、さあここからが私の仕事ですね! レオンハルト様はゆっくりお休みになってください」

かろうじて生き残って波の上を頼りなげに漂っている敵艦の処理と、味方の損害の分析。どれだけの物資を使い、どれだけ残っているかの把握。などなど、後処理が山のように頭の中に積み上がる。

レオンハルト様より先に船内に戻ろうとして、目を見張った。

全て落ちてしまったと思っていた敵のカギ爪が一つ、レオンハルト様の背後の縁に残っている。そこから人影が踊り出て、レオンハルト様にピストルの銃口を向けた。敵兵の生き残りだ。

「危ない!」

夢中でレオンハルト様の体を押す。私は敵と彼の間に立ちふさがる。よろける彼が事態を把握するより前に、敵の指がトリガーを引いた。

発砲音が鼓膜を叩く。火花が咲いたと思ったら、左腕を鋭い熱が通りすぎていった。体がぐらりと揺れ、帽子が足元に落ちる。長い自分の髪の毛が視界に亜麻色の模様を描いた。

「ルカ!」

倒れ込む私を受け止めたのは、レオンハルト様のたくましい両腕だった。

「どうした!」

音に気づいたライナーさんが階段を駆け上がり、自分の腰から抜いたピストルで縁につかまっていた敵兵の眉間を撃ち抜いた。

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