元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「ライナー! いや誰でもいい。衛生兵のクリストフ・フォルカーを俺の部屋へ!」
レオンハルト様が声を張りあげると、兵士が駆け寄ってくる音がした。
どうしてクリストフなんかを呼ぶんだろう? 痛みと貧血でぼんやりしてきた私を、レオンハルト様が抱き上げた。
彼が駆け出したのだろう。激しい震動が伝わってくるけど、もう抗議する気力もわいてこない。
やがてバタンとドアが閉まる音がした。背中にベッドの柔らかさを感じると、少しだけホッとした。
このまま眠ってしまおう。気が遠くなっていく私に、誰かが話しかけてくる。
「ルカ、お前はまさか……」
ああ、レオンハルト様の声だ。
嘘をついていてごめんなさい。全然役に立たない副官でごめんなさい。
温かい手が頬を包む。
その感触すら遠くなって、私はいつの間にか意識を失っていた。