元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
一時の休息とプロポーズ
……よく眠った。
そういえば、連日色々なことがあって眠れなかったんだっけ。初めて戦艦に乗って、レオンハルト様の体を拭いているうちに転んだり、クリストフにいやがらせされたり……。
「はっ!」
二度まばたきをして飛び起きた。そうだ、敵軍との衝突はどうなったんだっけ。
辺りを見回す。そこは全く見覚えのない寝室だった。戦艦の中じゃない。もっと天井が高く、レオンハルト様の寝室の倍は広い。
染みひとつない天井には、シャンデリアが。自分が寝ているのは天蓋付の豪華なベッドで、床には毛足の長い絨毯が敷かれている。
どこの貴族の屋敷なんだろう。私はいったいどうしてこんな場所に?
冷静になろうと深呼吸を繰り返す。すると左腕に巻かれた包帯に気づく。気づいた途端に思い出したように鈍痛が走った。
そうだ、敵艦隊との戦闘はヴェルナー艦隊の圧勝に終わったんだ。黒い船たちが渦の中に消えていったあと、敵の生き残りに撃たれて……。
鮮明な記憶が甦ってくると、体が震えた。
私……知られてしまった。レオンハルト様に、この体が女のものだということを。
無意識に自分の体を抱く。むき出しになった肩から熱が奪われていく。胸にはさらしがゆるめに巻かれていた。