元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
とにかく、ここがどこかを知る必要がある。着替えを探して辺りを見回していると、突然部屋のドアが無遠慮な音を立てて開いた。
「ああ、起きていたのか」
「レオンハルト様……!」
「まだ寝ていると思っていた。失敬した」
慌ててシーツで体を隠すと、レオンハルト様の後ろからクリストフが十字の描かれた救急箱を持って現れた。
「包帯を変えます。さあ、傷を見せて」
クリストフはベッドの脇に置かれた椅子に座ると、慣れた手つきで戸惑う私の腕の包帯を取る。
「大丈夫、綺麗に塞がっています。少しの間無理は禁物ですが、普通の生活はできるでしょう。感染予防に入浴は避けて。体ふきで我慢してください」
あの気持ち悪かったクリストフが普通に私の傷を見て、薬を塗布して包帯を巻きなおす。私はそれを不思議な気持ちで見ていた。
「こいつはお前に借りがある。お前の正体を口外することはない」
そう言ったレオンハルト様が口角を上げる。
借りって、あの嫌がらせに対する処分を求めなかったってだけだけど。
私が撃たれたときにクリストフを呼んだのは、そういう理由があったからなのか。どうしてこの非常時に彼なのかと、気を失う直前に失礼なことを思ったのは覚えている。
「それにこいつは女性に興味がない。ちょうどいい医者を見つけた」
「医者になりそこねた衛生兵ですけどね。大丈夫、僕はあなたの裸を見てもちっともムラっときやしません。安心して、女性ならではの悩みも遠慮なく話してください」