元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「あんまりでございますね……突然今日だけ女性に戻れだなんて」

「もういいよ、ばあや。一日だけだろ」

思い切って寝間着を脱ぎ捨てる。いつも目立たないようにさらしで潰している、私には無用の乳房が揺れた。

「さあ、なるべく苦しくないようにやっておくれ」

ばあやは、私が男として生きるための苦労や葛藤を知っている。あまり機嫌を損ねていると、ばあやが私に気を遣って疲れてしまう。彼女のために笑顔を作って、なるべく爽やかな声を心がけて言った。

「任務だと思って乗り切るさ」

こうして私は、生まれて初めて女装して公の場に出ていくことになったのだった。



軍の式典が行われる、宮殿中央にある大広間。

今日は一か月前の戦争で武勲を立てた人たちに勲章を授与する式典らしい。本当なら私は後方勤務部隊の一員として、この式典の運営の方に参加しているはずだった。

警備兵は山ほどいても、姉上の代わりは私しかいない。本来努めなければいけない役目がどうしようもなく些末なものに思えて悲しい。

ちなみに我が国は大海を経た別の大陸にある、エカベトという国と百年越しの戦争をしている。


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