元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「さて」

その長身には小さすぎる、背もたれもない丸椅子に座ったレオンハルト様が私の顔をのぞきこむ。

二人きりにされ、心拍数が倍ほどに跳ね上がった。

「ルカ。お前はいったい誰だ?」

アンバーの瞳に射貫かれて、体の震えが戻ってくる。レオンハルト様の表情は真剣そのもので、いつもの茶化すような笑みの欠片はどこにもなかった。

息を飲み込み、慎重に上官の質問に答える。

「私は……ルカ・クローゼ。これは本名で間違いありません」

父上は、私に男の名前しか与えなかった。

「どうして、女なのに軍服を着て男のフリをしている?」

他の国では女性軍人もいるらしいが、アルバトゥスでは皇帝陛下の軍隊には男子しか入隊できないことになっている。

「それは……」

隠しても仕方がない。もう、ばれてしまったんだから。

私はぽつぽつと家族以外にはひた隠しにしてきた過去を語る。

クローゼ家に生まれたのは七人の女子で、嘆いた父上が七人目の私を男として育て、軍隊に入隊させたことを。

「……クローゼ元帥ほどの人が、そんなことをするなんて。いや、陸軍で武勲を重ねてきた彼だからこそ、血縁の立派な軍人を育てたかったのかもしれないな」

レオンハルト様の言葉に、私は答えなかった。どう考えても、父上の気持ちは私には理解できない。

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