元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「やっぱり、無理です」

レオンハルト様から顔を背け、うつむいた。

私は育ててくれた父上を裏切れないし、きっと良い花嫁にはなれない。女性としての修業を何一つしてこなかったんだもの。

「お前の考えていることは、わかっているつもりだ」

頭をなでていた手が、そっと肩に回る。

「ぐだぐだ余計なことは考えるな。万事俺に任せておけ」

そっと抱き寄せられる。レオンハルト様の軍服からは、海のにおいがした。

「俺の花嫁になれ、ルカ」

間近で響いた声。逃げようとしたけど一足遅かった。後頭部を捉えられ、強引に唇を重ねられてしまう。

一度感触を確かめるように触れた熱い唇。何度かついばんだあと、強く押し付けられた。観念してまぶたを閉じる。

いつの間にか私を抱く腕に力がこもっている。どう息をしたらよいかもわからず、海の中で溺れる人のように手をさまよわせ、結局レオンハルト様の背中にしがみついた。

人の唇って、こんなに柔らかくて温かいものなんだ。

力が抜けてとろけていきそうな体とは逆に、心臓はうるさく鼓動を打ち続けている。

離れていた一年間を埋めるような長い口付けのあと、レオンハルト様は私をぎゅっと広い胸に埋めるように抱きしめる。

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