元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

といってもずっと戦闘が続いているわけではなく、攻めては退けられ、また攻められては退け、それを何年かごとに何度も繰り返し、なかなか決着がつかないという状態が続いていた。

今回の式典は、一つの大きな戦いに我が国が勝利したというお祝いをかねている。

コルセットとドレスと化粧で、肺と皮膚の両方から呼吸を損なわれる。扇で口元を隠しながら懸命に息を吸い、前方を眺めた。

皇帝陛下が玉座に座っている。これといった特徴もありがたみもない顔だ。その正面に、勲章を授与される軍人のための赤い絨毯が引かれていた。その場所を取り囲むように、侯爵以上の貴族や軍の将官が座っている。

伯爵以下の貴族や下士官はさらにその後ろに雑然と立っていた。私はその中で、早く帰りたいと心から願っていた。周りを見ると、自分の他にも美しく着飾った年頃の娘さんが何人かいる。

「海軍大将、レオンハルト・ヴェルナー、前へ」

皇帝陛下の近くに控えていた父上に名前を呼ばれ、ひとりの男性が群衆の前に出る。その姿が網膜に写った瞬間、私は息を飲んだ。

金色のボタンや刺繍、肩当てがついた長い紺色の軍服が翻る。髪は黒く、襟足はスッキリと短く切られていた。日焼けしすぎていない健康的な肌に、アンバーの瞳がきらめいている。


< 8 / 210 >

この作品をシェア

pagetop