元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
あっさり離れていった唇に拍子抜けしながら、手を取られベッドに誘導される。
何もしないという言葉を信じることにして、私はレオンハルト様と同じ寝床に入った。
明日からはまた海の上か。朝からどんな流れで仕事をしようか考えているうちに睡魔が襲ってくる。
隣で横になったレオンハルト様が、私の頭を自分の胸に引き寄せる。温かい寝床の中でのゆったりとした触れ合いは、私の心を不思議と穏やかにさせた。
今までは触れられるたび動揺しっぱなしで、いつ心臓が壊れるかと思っていたのに。
警戒を解いて彼に寄り添いまぶたを閉じる。するとすぐに心地良い眠りが訪れた。
……のだけれど。
「……うう、あ……」
耳元で低い音がして、ビックリして飛び起きる。暗闇に慣れてきた目で隣を見ると、レオンハルト様が眉間にシワを寄せて唸っていた。
「レオンハルト様?」
どうしたんだろう?
彼は発熱したように、首筋に汗をかいている。はりついた前髪をかきあげ、額の熱を自分の手のひらで感じた。けれど、高熱が出ているというわけではなさそう。
なのに、彼は目の前の虫を追い払うように、力なく手を振る。
まさか、夢にうなされてる? 不敗の軍神と呼ばれるレオンハルト様が?