元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
すらりと伸びた四肢。そして端正すぎるその顔は、軍人らしくなかった。まるで生きた彫刻みたい。
今まで見た陸軍将官たちはことごとく筋骨隆々だったから、余計にそう思うのかな。
彼の姿に圧倒されたのは私だけではないらしく、あちこちで感嘆の吐息が漏れる音が聞こえた。それは主に、女性のもののようだった。
あんな容姿端麗な軍人がいるなんて。彼の動作はそれ自体が音楽を奏でているかのように優美で、目が離せない。
皇帝陛下の前に彼が跪くと、顔が見えなくなった。今度は女性たちから嘆息が聞こえる。皇帝陛下が先の戦争での彼の功績を称え、勲章と元帥の称号を与えた。
座っているだけの皇帝陛下の代わりに勲章を運ぶ下士官から恭しくそれを受け取ると、ヴェルナー元帥は優雅に退場していった。
ああ、今日の式典のメインがいきなり終わってしまった……。
そんな気持ちになり、余計に息苦しくなってしまった。次々に呼ばれる名前も皇帝陛下の声も耳に入ってこない。
私も軍人の端くれ。他人の階級がどうでもいいわけじゃないけど、あの卓越した美貌の元帥に比べると、どの人物も見劣りしてしまう。