元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「そうだね。誰だってなるべく楽して勝ちたいよ」
アドルフさんが珍しくライナーさんに同意する。
「しかし、帝国艦隊随一の智将であるヴェルナー提督を倒したら、敵の名声も上がるというものだろう」
真面目なベルツ参謀が首を傾げる。それに対してレオンハルト様は苦笑で返した。
「名声より、戦争の早期終結を望んでいるんだ。敵も長い戦で消耗を続けて、この戦いを最後にするしかないと思っているんだろう」
戦争を繰り返せば、国の財政が圧迫される。徴兵が度重なれば、労働する者がいなくなり、国内の生産力は格段に落ちる。
そしてろくに訓練されていない寄せ集めの兵士をいくら投入しても、軍隊内の質は悪くなるばかり。いいことはない。
「どうします、レオンハルト様」
私は彫刻のようなレオンハルト様の顔をのぞきこむ。彼は腕組みをして座ったまま海図をにらんだ。
さて、レオンハルト様はどうするか。
敵の主力が他の艦隊と衝突している間にこっちが先にエカベトを攻めてしまうか。それとも味方艦隊と合流し、共に敵の主力を討つか。
「よし、合流しよう」
レオンハルト様は決断すると、連絡船の兵士に向かって海図を指さし、合流地点を決めた。