元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「衝突までまだ二日はありそうだと言ったな。敵には合流すると悟られないように、急ぎすぎず、けれど速やかに合流しよう」
ちょっと難しそうなその指示とレオンハルト様からの返事の手紙を持ち、連絡船の兵士は恭しく頭を下げて自分の船に戻っていった。
「やれやれ。敵も味方も、情けない軍人が増えたものだ」
ベルツ参謀が深いため息をつく。
「数の上で劣勢なのは仕方ない。相手より多い数で挑むのが戦争の基本だ」
「ええ、もちろんわかっております」
結局誰もレオンハルト様の決定に口出しをする気はないみたい。誰もが彼の知略に任せれば安心と思うのはわかる。けれど、それって……。
「航路を変更する。アドルフ、頼んだ」
「御意」
細かい指示を出さずとも全てを察したような表情でアドルフさんがうなずいた。
みんなが次の仕事のために会議室を出ていくと、レオンハルト様がぼそりと呟いた。
「やっぱり一個艦隊を倒したくらいじゃ、敵は諦めてくれないか」
それは愚痴ににた響きをもって私の耳に届いた。
「いっそ、他の艦隊を全部招集してエカベトに向かった方がいいかもな。数の上で明らかに劣勢とわかれば、降伏してくるかもしれん」
テーブル上の海図の上で船の模型を遊ばせながら言うレオンハルト様。