元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「どうでしょう。わが軍がこのまま優勢となれば戦場は自然とエカベトに近くなります。補給基地がすぐ後ろにあるというのに、簡単に降伏するでしょうか」
むしろ、追いつめられたら実力以上の力を発揮するかもしれない。
「逆に補給線が伸びきったこちらの方が危ないかもしれないな」
本国や補給地から遠く離れたわが軍の後ろに回り込めば、補給船との連絡を絶つことができる。
食料や武器弾薬が補給されなくなる。どちらの軍もそれが一番危惧すべき事態だった。
「合流するまでに作戦を考える。お前は他の仕事をしてこい」
苦笑に似た表情のまま、レオンハルト様は視線を海図に下げた。
ひとりにしてほしいということか。
会釈をし、部屋を出た。レオンハルト様はそのまま、夕食まで会議室から出てこなかった。
我が軍の指揮権は全てレオンハルト様に属する。不敗の軍神と呼ばれる彼に、部下たちが絶対の信頼を置いていることは、まだ短い時間しか同じ船に乗っていない私にも感じ取れた。
けれど、このごろ少し気になることがある。みんな、彼に頼りすぎじゃないだろうか。
もちろん参謀のベルツさんなんかは、艦隊の運用全体に様々な客観的意見をレオンハルト様に聞かせてくれる。彼もそれを頼りにしている。