元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

けれど、ヴェルナー艦隊だけじゃなくアルバトゥス海軍全体が、『元帥閣下に任せておけば負けるはずはない』という空気になっていることは、レオンハルト様にとって多大なる心理的負荷をかけているんじゃないだろうか。

仕事を終えて食堂に行くと、レオンハルト様はいつもの大らかな笑顔で部下たちと一緒に食事を摂っていた。

心配のし過ぎだったかな。そもそも、みんなに頼りにされることを負担に思う人が元帥までなれるわけないよね。

安心して少し離れた場所で食事を摂っていると、横から声をかけられた。

「相席よろしいですか」

「クリストフ。どうぞ」

グレーの髪と目を持つ衛生兵はにこりと笑い、私の向かいに座った。

「怪我の具合はいかがですか」

「ええ、大丈夫。ありがとう」

彼のおかげで私の腕の傷は倦んだりせず、おとなしく塞がっている。毎日塗った方が良いという薬は瓶に入れてもらい、今では包帯の交換も自分でするようになった。

「良かった。あと四日で抜糸できますから」

「ではその日にレオンハルト様の執務室を使えるように頼んでおくよ。時間は追って連絡する」

初めて言葉を交わしたときは最強に気持ち悪かったクリストフだけど、私に性的興味を失った彼は人畜無害の存在……いや、誠実なドクターとなっていた。

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