元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
淡々と語るクリストフの言葉に再び絶句、そして呆然とした。
肌のツヤなんて、自分でもどうなっているのか気づかなかった。ただ顔を洗う時にいつもより手触りがいいなとは思ったから、いい感じになっていたんだろう。
医者ってそんなことで何があったかわかるのか。すごいな。
「なにぼんやりしてんだよ副官!」
後ろからバンと背中をたたかれ、びくりと全身が跳ねた。いたずらっ子の顔で笑って去っていくのはライナーさんだ。
「き、気を付けるよ。ありがとう」
下手に言い訳をせず、会話を終わらせることにした。
器の中にまだ九割残っているシチューをすすりながら、考え込んでしまう。
レオンハルト様の傍にいようとは思うけど、うっかり身ごもったりしたらえらいことだ。そんな体で長い船旅に耐えられるわけがない。
かといって不自然に距離を開ければ、提督と副官の間に不和が生じたのかと周りに思われてしまう。
う~でもでも、初夜みたいに迫られたら、抵抗できる自信がないし……。
寝室は同じにしつつも、レオンハルト様があきらめて寝るまで逃げるしか、ない?
「おー、なんかすっげえ馬鹿なこと考えてる顔してるなー」
ライナーさんが茶化しながら酒瓶を三本持って通り過ぎていく。私はぼーっとしていて、それを注意することもできなかった。