【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「おはよう」を言ってくれるみんなに同じ言葉を返して、定位置のソファに座る。
ダイアリーを広げたわたしの隣で、椛が「そういえば」と小さく零した。
「今週の木曜からゴールデンウィークってことは、異国交流は来週の月曜からなのか~」
「え? あ、そうね……」
まずい、忘れてた。
そういえばゴールデンウィーク明けからだった、と顔を引き攣らせるわたし。あの電話以来、茉文から一度も連絡は来ていないけれど。
「忙しくなりそうだねえ」
「……きっと賑やかだと思うわよ」
あの男は間違いなく"何か"やる。
不安しかないなと、無意識にため息がこぼれた。
やらなきゃいけないことは、山積みで。
バッグの中にある進路希望調査票にも、渡されたばかりの書類にも手をつけられないまま。
「わたし、ちょっと授業行ってくる」
「ん〜。お昼どうすんの〜?」
「今日はお弁当持ってきてないから、」
「了解。んじゃ南々ちゃんの分も作るわ〜」
自分の中にある空白を埋めるように。
ほかのことを考えなくてもいいように。
そうやって感情を詰めるような自分の行動に、どうすることもできないまま。
もがくように呼吸をする自分が、まるでどこか深い水の底に沈んでいるような気分だった。