【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「なんか、訳ありって感じだな」
だからわざわざ2階上の自宅に帰らず、俺の家で時間潰してんだろうけど。
立ち上がってコーヒーのおかわりを淹れるためにキッチンに入れば、リビングからは物音ひとつ聞こえてこない。
「お前帰んなくていいの?
遅くなったら、南々瀬ちゃん心配するだろ」
「あいつも今日はしばらく帰ってこねえよ」
「今日? 何かあんの?」
「放課後に、夕陽の誕生日会してんだと。
あいつ明日誕生日だろ。でも仕事入って出れねえから、今日やるって朝から張り切ってた」
ああ……明日からゴールデンウィークだしな。
学生アイドルは平日学校に行く分、稼ぎ時だろ。
「夕飯考えてねえなら、何か作ってやるけど」
「いや、今日の朝南々瀬が作った晩飯が冷蔵庫に入ってるから良い」
「……あの子マジで優秀だな」
男子大学生ひとり、一食ぐらいどうとでもなる。
食いに行ってもいいし買いに行ってもいいのに、わざわざあの子が作っていってんのか。
「で? あの子は一体何に悩んでるんだよ」
その表情から察するに、夕陽の誕生日を彼女が張り切って祝ってるから嫉妬してる、みたいな感じでもなさそうだし。
つーか俺、まだあいつの誕生日プレゼント決めてねえわ。
カップをふたつテーブルに置いて、向かい合った席に座る。
いつみの前にはノートパソコンが置かれてはいるものの、作業する気はないのか、ずっと閉ざされたままだ。