【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「責任の取れない役職に就きたくないんだと」
「………」
「……無責任、って思っただろ。
でもあいつが言ってんのは、そういう意味じゃない」
南々瀬ちゃんは、特殊だ。
政界の人間が彼女の両親に目をつけ、その子どもを人質にすると決めた、瞬間から。
「あいつ自身、15年かかって成功しなかった計画を、政府があっさり引くわけがないことに薄々気付いてる。
……だから、もし。"また"自分が不利な状況になった時に、責任の取れない仕事をしたくない」
「………」
ひやりと、身体の内側が冷える。
椛が、どうして南々瀬ちゃんなんだって言ってたけど。そう思っているのは、ほかの誰でもないいつみだと思う。
「しかも新しい企画を通すとかで、必然的に色々背負わされることになる。
そんな状況で別のことに巻き込まれたら、8プロの場合、所属している人間に影響を及ぼすからな」
「……俺の勝手な想像だけどさ。
お前、南々瀬ちゃんと結婚したら海外飛ぶつもりだったんじゃねえの?」
「………」
「海外の大学出て、そのまま向こうで暮らすつもりだっただろ。
珠王だったら世界に拠点が多いし、日本に両親を残しておけば向こうでまた大きな拠点として自分も責任者に就ける」
何より、あの子の両親は近いうちに海外に行かなきゃいけなくなる。
南々瀬ちゃんが転校前にずっと望んでいた、両親と過ごすという目的を、果たしてやりたかったんじゃないのか。
「……確かに、そのつもりだった」
吐き出されたため息は、やっぱり重いままで。