【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「……でも今はこうやって不安定な状況でも、お前らみたいに支えてくれるヤツがいるだろ。
だけど向こうに飛んだら、あいつが不安定になったときに、助けてやれるヤツがいない」
「………」
「親もいくみも、あとは八王子の関係者も。
今は南々瀬を助けてはくれるけど、向こうに飛んだらそれが途端に難しくなる」
電話や文面での会話なら、いくらでもできる。
だけど実際に会うのとではまた、色々と変わってくるわけで。
「俺がずっとついててやれるなら、そうするけどな。
……それも難しいなら、日本に残ったほうが良い」
「………」
「結局政界の手から逃れようと、あいつの精神が折れたら何も意味がない。
……縄が切れたら落ちそうな吊り橋のど真ん中にいるようなもんだろ」
両端が弱っている中で、ど真ん中にいる。
そんな状況でどっちに動いたって、すこしでも力を加えれば、吊り橋はあっけなく落ちてしまうだけ。
選べるのは、どちらにするか。
運良く落ちない可能性があるのなら、そっちに賭けるしかない。危険すぎる手段だ。……南々瀬ちゃんにとっても、いつみにとっても。
「……酷、だな」
「……南々瀬が転校してきた時も、お前はそう言ってたな」
「あれはあいつら双子の話だけどな……」
あのときはまだ南々瀬ちゃんの実態を知らなかっただけで。
踏み込んで見れば、予想以上に深く底が見えないのは彼女の方だった。
それに。
ルノとルアは、彼女のおかげでもう救われてる。