【完】こちら王宮学園生徒会執行部



いい意味で、わたしと違って彼女は単純だ。

生まれてからずっと難しく考えてきたわたしにとっては、何も考えずに単純な行動をとることほど怖いものはない。



「でも、南々瀬なら大丈夫じゃないかな」



ふいに。

放たれたその言葉の真意を知りたくて彼女を見つめてみるけれど、みさとにとっては何気ない発言なのか、視線がかち合うことはない。



「言ったでしょ?

南々瀬がロイヤル部に入ろうか、迷ってた時」



迷っていたとき。

たしかに彼女は、わたしに言葉を差し出してくれた。



『……南々瀬が入りたいって思うなら、

そうするべきだとおもうよ』



いつみも「やりたいならやればいい」と、同じように言ってくれた。

わたしのまわりの人たちはいつだって、そうやってわたしの意思を尊重しながら、進む方向を教えてくれる。手助けしてくれる。




「結局南々瀬は入ることを選んで、いまは珠王先輩っていうすてきな彼氏もできたわけでしょ?

もしあのとき入ることを選ばなかったら、」



入ることを、選ばなかったら。

きっと今も人質として生きること以外に選択肢なんて与えられていなくて、永遠にその鎖にとらわれていたのかもしれない。



入ってよかったのかと、問われたら。

よかったとしか答えようがないくらい、物事はいい方向へと進んだ。



「もしかしたら、悪い方向に進んじゃうかもしれないけどさ。

南々瀬のまわりには、それでも支えてくれる人、いっぱいいるよ」



ふわり。

笑ってくれる可愛い親友の言葉に、ほぼ無意識に「そうね」とうなずいていた。



そうだ。

わたしのまわりには、支えてくれる人がたくさんいる。……だからここまで、来れたのに。



肝心のわたしがそれを忘れてどうするんだと苦笑しながら、みさとに「ありがとう」とお礼を言う。

唐突なお礼だったせいで彼女は何のことか分からなかったらしく、きょとんとしている姿が可愛くて笑ってしまった。



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