【完】こちら王宮学園生徒会執行部
わたしが転校したのは6月。
ということは、まだ出会って1年も経っていないのか。……わたしの感覚では、もう随分と長く一緒にいる気がするのに。
「ねえ、いつみ」
「ん?」
「……だいすき」
顔を見ながら言うのは気恥ずかしくて、うしろに彼の息遣いを感じながら言えば。
彼はくすりと笑って、耳元で「愛してる」と囁いてくれる。
最上級の、愛の言葉。
ずっとわたしを想ってくれていた彼からのその言葉は、何よりも信じられる。
まだほんのすこし熱い手で、いつみの手に触れる。
恋人同士であることを主張するように指を絡めて、振り返って、一度だけキスを交わした。
「明日、映画行くって約束しただろ?
そのあと……すこしだけ用事に付き合ってくれるか?」
「……用事? いいけど、」
「リナんとこに、顔出しに行く」
リナさんって、あれか。
わたしが彼の浮気だと誤解してしまった人で、いつみや夕帆先輩が1年の時に生徒会長だったっていう彼か。
「うん、付き合うわよ。
純粋に、リナさんに興味あるし……」
「……うっかり惚れんなよ」
そんなわけないってわかってるくせに。
釘をさしてくる彼に「大丈夫」と答えて、おやすみを言い合ってから目を閉じた。──今日はなんだかしあわせなゆめを、見れそうな気がする。