【完】こちら王宮学園生徒会執行部
部屋に入る際に扉の横にあったプレートを見てみると、『VIP ROOM』の文字。
先に部屋に入ったいつみは、「お前」と顔を顰める。
「……なんで今日はその格好なんだよ」
その視線の先は、部屋の中のソファに優雅に腰掛けるひとりの美青年に向けられている。
思わず見惚れてしまいそうなくらい綺麗な顔立ちの彼は、その発言には答えずに「ようこそ」とわたしに笑いかけてくれた。
「はじめまして。
『ask』オーナーの新見リナトです」
リナさんってこの人か……!!
ちょっと待って、てっきり女装姿の彼とお会いすると思い込んでたから、驚きを隠せないんですけど……!!
「は、はじめまして。
えっと、姫川南々瀬です」
動揺しながらも、名前を名乗る。いつみが1年生だった時に彼が生徒会長だったことを知っているから、現在の生徒会長をつとめていることを補足すれば。
彼はふわりと笑って、「かわいい生徒会長だね」と言ってくれたのだけれど。
「しれっと口説いてんじゃねえよ」
「口説くなら、もっとしっかり口説くよ。
初対面の挨拶で女の子に対してかわいいって言うのは当然の行為でしょ?」
「天然クソたらし」
早々に文句を述べるいつみに、苦笑する。
さっきの年上好き云々は置いておいて、彼は基本的に年上を相手にするのが嫌いなのかもしれない。いくみさんに対してもこんな態度だし。
……いや、いくみさんに対してはただの姉に対する反抗かもしれないけど。
「あ、座って座って」
いつみのそんな文句を気にもとめず、彼はわたしたちをソファにすすめてくれる。
黒い革張りで座ればふかふかのそれは、言われなくてもわかる高級品。