【完】こちら王宮学園生徒会執行部
付き合って欲しいと言われただけで大して用件がわかっていないわたしは、ただふたりのやりとりを眺めることしかできなくて。
「失礼します」と扉が開いたかと思えば、入ってきたのはさっきこの部屋に案内してくれた彼の姿がある。持っているトレーには、3つのグラス。
それを無駄のないスマートな動きでテーブルに置いて、「失礼しました」と彼は部屋を出ていった。
……でもこれ、カクテルグラスなんですけど。
「コイツのに酒入れてねえだろうな」
「そんなことしないよ、俺も高校生にお酒飲ませて捕まりたくないしね。
それよりいつみ、自分の心配すれば?」
「………」
言われて、ジト目でリナさんを見るいつみ。
そんないつみにくすくす笑いながら、自分の前に置かれたグラスに口をつけるリナさん。
……自分の心配?
「コイツね、実は酒飲めないんだよ」
「え、」
「飲めないっていうか、
梅酒のソーダ割でも飲みきる前に酔うよね」
1杯でも怪しいぐらい、と。
楽しそうなリナさんの言葉に、いつみが何も言わずに舌打ちするから、どうやら事実らしい。
まだ未成年のはずの彼がお酒を飲めないことを知っている理由はさておき。
梅酒1杯で酔うって、それ相当弱いんじゃ……
「だからこれがアルコールベースだったら、南々瀬ちゃんの心配より自分の心配したほうがいいでしょ?
まあ、もちろん南々瀬ちゃんのもいつみのもノンアルだけど」
わたしの前に置かれているグラスにはオレンジの輪切りが浮かんでいてオシャレだ。
ノンアルらしいからそろりと口をつけたのだけれど、甘さと酸味が程良い割合になっていて美味しい。