【完】こちら王宮学園生徒会執行部



というか、そもそもだ。

すごくすごく大前提に、わたしは知らないことがあって。



「あの、ここって……」



そもそも何のお店なのかを聞いていない。

そう思ってふたりに視線を巡らせれば、いつみが「キャバ」と一言。



……キャバ? え、キャバ、って。



「キャバクラ……?」



「うん。ほかに2つ扉あったでしょ? 入り口。

片方はホストクラブで、もうひとつはニューハーフのパブ。ここはキャバなんだけど、ウチは普通の店じゃないから色々変わっててね」



キャバ、と言われればきらびやかなお姉様方であふれているイメージだけれど、入ってきてから彼とリナさんにしか会っていない。

いや、そもそもキャバクラになんて行ったことがないから、どれが普通でどれが変わっているのかわかんないけど。




「どうして、わたしを……?」



問題はこれだ。

リナさんがわたしを紹介しろって言ってたみたいだけど、本当にそれだけなのか。



「ここの常連客に、敷島って名前の男がいる。

お前がルノの婚約者の件で追い払った、あの政界の男だ」



「、」



「その関係で、この店でお前の名前が出てるらしい。

それを調べるのを兼ねて、今日は連れてきた」



いつみの手が、わたしの頭を撫でる。

淡く揺らめく漆黒の瞳は、困ったように下げられた。



「悪いな、南々瀬。

本当は不快な思いさせたくねえけど、」



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