【完】こちら王宮学園生徒会執行部



紙箱から一本取り出したタバコを咥え、シュッとホイールを指で回して火をつける彼。

ライターではなくジッポー派らしい。そしてそれが似合うあたり落ち着き様が大人の人だな、なんて。



そんなことを考えていれば、彼がふっと紫煙を吐き出す。

視界が一度白く染まって、独特の香りに顔を顰めた。



「これはあくまで俺の考えだけど、」



「………」



「どうも引っかかるんだよね。

"あの"いつみが、所詮初恋なんかを引きずってる理由」



「知ってるん、ですね」



「そりゃあ、いつみも夕帆も"ロイヤル部"を作りたがってたからね。

腑に落ちなかったし、何よりメリットがなかったから俺が生徒会長の時は許可しなかったけど」




淡々としたその口調と、彼が告げる言葉。

それらを耳にすれば、厄介な人であることはわたしにもわかった。今までに会ったことのないタイプ。



「いつみを一瞬にして虜にした話。

できれば、今詳しく聞かせてくれない?」



「……覚えてないんです」



「……へえ?」



「幼い頃に受けたショックが大きくて、そのあたりの記憶がぐちゃぐちゃになったので。

いまでも断片的にしか思い出せませんし、いつみと出会ったときのことは覚えてますけど、それも一部しか……」



どれもこれも事実だ。

だけど彼は、意味深に笑みを浮かべて。



「なんか、都合のいい話だよねー。

もちろん嘘じゃないと思うけど、普通に考えて、俺はいつみの気持ちを疑うよ?」



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