【完】こちら王宮学園生徒会執行部
吐き出された言葉を聞いて、思わず露骨に顔をゆがめてしまった。
こんなことを言うのはどうかと思うけど、わたしの世界はいつだってわたしを中心に回る。
人質という言葉ひとつで、政界すらもわたしの手中だった。
真っ向から敵になるような存在は、今まで現れなかった。
結果としてわたしは人質から解放され、生徒会長になって、生徒会のメンバーとともに幸せな日常を送ってる。
挙句、来年の卒業後には入籍を控えて。
「いつみが、
わたしを好きじゃないってことですか?」
まるで誰かが糸を引いているかのように。
できすぎた、わたしの世界。
「そこまでは言わないけど。
……例えば幼なじみだとか腐れ縁だとか、それなりに会う機会があって10年以上好きとか、はたまた昔の恋心が再熱とかは普通でしょ?」
でも、と。
付け加えた彼が、テーブルの上に置かれたクリスタルの灰皿にぽとっと灰を落とす。
「一度しか会ったことのない女の子に、
ずーっと片想いなんて、正直正気の沙汰じゃないと思うけど」
ひどいことを言っているようにも聞こえる。
だけどそれが、正しい反応だと思った。
むしろこの流れがすべて肯定されている現状の方がおかしい。
わかっているのにそうならなかったのは、ただ気づかなかっただけか、それとも、気づかないフリをしたからなのか。
「いつみと、南々瀬ちゃん。
……隠し事をしてるのは、一体どっち?」
「どちらかが隠し事をしてるのは、
まるで決定事項みたいですね」
「決定事項でしょ」
ジッ、と灰皿に押し付けられたタバコ。
オレンジ色の炎はもみ消されて、灰と細い煙だけを残して消える。──誰も逃れることのできない現実を、目の前に突きつけるみたいに。