【完】こちら王宮学園生徒会執行部



吐き出された言葉を聞いて、思わず露骨に顔をゆがめてしまった。

こんなことを言うのはどうかと思うけど、わたしの世界はいつだってわたしを中心に回る。



人質という言葉ひとつで、政界すらもわたしの手中だった。

真っ向から敵になるような存在は、今まで現れなかった。



結果としてわたしは人質から解放され、生徒会長になって、生徒会のメンバーとともに幸せな日常を送ってる。

挙句、来年の卒業後には入籍を控えて。



「いつみが、

わたしを好きじゃないってことですか?」



まるで誰かが糸を引いているかのように。

できすぎた、わたしの世界。



「そこまでは言わないけど。

……例えば幼なじみだとか腐れ縁だとか、それなりに会う機会があって10年以上好きとか、はたまた昔の恋心が再熱とかは普通でしょ?」



でも、と。

付け加えた彼が、テーブルの上に置かれたクリスタルの灰皿にぽとっと灰を落とす。




「一度しか会ったことのない女の子に、

ずーっと片想いなんて、正直正気の沙汰じゃないと思うけど」



ひどいことを言っているようにも聞こえる。

だけどそれが、正しい反応だと思った。



むしろこの流れがすべて肯定されている現状の方がおかしい。

わかっているのにそうならなかったのは、ただ気づかなかっただけか、それとも、気づかないフリをしたからなのか。



「いつみと、南々瀬ちゃん。

……隠し事をしてるのは、一体どっち?」



「どちらかが隠し事をしてるのは、

まるで決定事項みたいですね」



「決定事項でしょ」



ジッ、と灰皿に押し付けられたタバコ。

オレンジ色の炎はもみ消されて、灰と細い煙だけを残して消える。──誰も逃れることのできない現実を、目の前に突きつけるみたいに。



< 148 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop