【完】こちら王宮学園生徒会執行部

・ワスレナグサ








「おかえりなさい。

いつみ先輩、何の用事だったんですか?」



リビングの扉を開くと同時に、ルノにそう声をかけられた。

何の用事、と言われて今の電話の内容を思い出すけれど。



「異国交流の話……?」



そんな、曖昧な返事しかできなかった。



お昼に持ってきたお弁当を食べ終えたところで、着信を知らせたスマホ。

誰かと思えば相手はいつみ先輩で。



内容は異国交流のことだったのだけれど、結局よくわからなかった。

……っていうか、どうしてわたしが今朝聞いたばかりの話を知ってるんですか。



まあ、彼の姉はいくみさんだ。

そしてその彼氏は幼なじみの夕帆先輩なんだから、どこからでも聞きつけてきそうだけど。




「なに、あの人暇なの?」



そんなわたしとルノのやり取りに、気だるそうな声を投げてくる夕陽。

そういえば彼の昼食は菓子パンとコーヒー牛乳だった。



朝食といい、椛が週に何度か美味しい料理をつくってくれない限り、彼の食事はとことんいい加減な気がする。

……まだ成長期なのに。



「いまお昼なんじゃない?」



「まあ、別にどうでもいいけど。

それより本気で一緒に住んでんの?割と生態謎じゃない?」



聞いたくせに"どうでもいい"って……まあいいや。

しかも発言内容は、いつみ先輩の「生態が謎」。



そんなにおかしいことしてないと思うけど。

というか、仮にもいつみ先輩と夕陽って幼なじみじゃなかったっけ。



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