【完】こちら王宮学園生徒会執行部
・ワスレナグサ
◆
「おかえりなさい。
いつみ先輩、何の用事だったんですか?」
リビングの扉を開くと同時に、ルノにそう声をかけられた。
何の用事、と言われて今の電話の内容を思い出すけれど。
「異国交流の話……?」
そんな、曖昧な返事しかできなかった。
お昼に持ってきたお弁当を食べ終えたところで、着信を知らせたスマホ。
誰かと思えば相手はいつみ先輩で。
内容は異国交流のことだったのだけれど、結局よくわからなかった。
……っていうか、どうしてわたしが今朝聞いたばかりの話を知ってるんですか。
まあ、彼の姉はいくみさんだ。
そしてその彼氏は幼なじみの夕帆先輩なんだから、どこからでも聞きつけてきそうだけど。
「なに、あの人暇なの?」
そんなわたしとルノのやり取りに、気だるそうな声を投げてくる夕陽。
そういえば彼の昼食は菓子パンとコーヒー牛乳だった。
朝食といい、椛が週に何度か美味しい料理をつくってくれない限り、彼の食事はとことんいい加減な気がする。
……まだ成長期なのに。
「いまお昼なんじゃない?」
「まあ、別にどうでもいいけど。
それより本気で一緒に住んでんの?割と生態謎じゃない?」
聞いたくせに"どうでもいい"って……まあいいや。
しかも発言内容は、いつみ先輩の「生態が謎」。
そんなにおかしいことしてないと思うけど。
というか、仮にもいつみ先輩と夕陽って幼なじみじゃなかったっけ。