【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「どうしても?」
「はい、どうしても」
「……ふぅん。いつみにはもったいないな」
「誰にもったいないって?」
「だからいつ……、って。
相変わらず気配を消すのが上手だね」
にこり。
顔を上げた彼につられてそちらへ視線を流せば、心なしか疲れたようないつみの姿。
「おかえり」を言えば彼は無理やりわたしの隣からリナさんを追いやり、ぎゅうっと抱きしめてきた。
……かと思うと身体を離すから、ぱちぱちと瞬く。
「人の女にマーキングしてんじゃねえぞ」
「えっ……!?」
マーキング!?
え、何かされたっけ!?と。おどろくわたしをよそに、リナさんはにやりと笑ってタバコの箱をひらひらと振ってみせた。
「ごめんね、タバコのにおいついちゃったって」
「ああ……」
マーキングって、そういう、ね。
何かされたのかと思って焦ったじゃないか。
ふっと肩をすくめていれば、いつみは「帰るぞ」とわたしに声を掛ける。
その様子がなんだかいつもと違うように見えて、思わず彼をじっと見上げた。