【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「何か、手掛かりになるものあった?」



同棲して、ふたりで過ごす時間は極端に増えた。

なのに時折、いつみとの間にある空気がどこかぎこちなく感じるのは、わたしたちが結局は他人でしかないからだろうか。



結婚すれば、何か変わるのかもしれない。

だけど遺伝子で結ばれている親子と違って、結局、夫婦は戸籍上とふたりの感情で結ばれた関係でしかないから。



「まあ、多少はな」



「……それならよかった」



「心配しなくても、何かあればちゃんとお前にも伝える。

だから、お前は知らされるまでは平和に暮らしてれば良い」



お互いがお互いに歩み寄らなければ、上手くはいかない。

それをわかっているから、だから、余計に。




「……わかった。

でも、何かあったら、ちゃんと教えてね」



「ああ、約束する」



相手を守る、優しい嘘をつくんだろう。

「守る」なんて言葉、結局は相手のことを思いやるようで自分のことしか考えていない偽善だったのだと、気づくのはもっと後。



「夕飯何にしようかなぁ」



「リクエストして良いなら、あっさりしたもの」



「じゃあ和食ね」



来たときにはまだ点灯されていなかったネオン管が、徐々にそこら中で発色する。

鮮やかに彩られる夜の街を、わたしたちは後にした。



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