【完】こちら王宮学園生徒会執行部
第3章 方法は、ただひとつ
・今はとりあえず
◆
ゴールデンウィーク明けの朝。
8プロの社長の件について、はやく八王子さんに連絡しなきゃなぁ、なんて。そんなことを考えながら登校し、パスでC棟のロックを解除。
そのまま廊下をまっすぐに進み、リビングの扉を開く。
そこでようやく顔を上げたわたしは。
「おは……」
──バタン。
考えるよりも先に、扉を閉めていた。
……あれ、おかしいな。
今日の目覚めは悪くなかったはずなんだけど。
「幻覚……?」
もしかしてまだ寝ぼけてる?
っていうか寝ぼけてるんだと思いたい。
だっていつも通りにリビングの扉を開けたら、まさかソファの上に縛られた男がいるなんて思わないでしょ?
全身ロープでぐるぐる巻きにされてるの、どう考えたってウケ狙いとしか思えないんだけど。
「ナナ、
現実逃避するだけ無駄だから入って来なよ」
そうこうしているうちに、部屋から夕陽が顔を出す。
チェリーブラウンの髪の隙間から、いつ開けたのか一粒のピアスが見えた。
「夕陽、わたしいま寝ぼけてるみたいだから脳内を整理してるだけよ。
別に現実逃避してないの。だってあれは現実じゃ、」
ないでしょ、と。
わたしが、言い切るよりもはやく。
「Good morning. 南々瀬」
流暢な発音とともに、
さわやかな笑みを浮かべた男が視界にうつった。