【完】こちら王宮学園生徒会執行部
第3章 方法は、ただひとつ

・今はとりあえず








ゴールデンウィーク明けの朝。

8プロの社長の件について、はやく八王子さんに連絡しなきゃなぁ、なんて。そんなことを考えながら登校し、パスでC棟のロックを解除。



そのまま廊下をまっすぐに進み、リビングの扉を開く。

そこでようやく顔を上げたわたしは。



「おは……」



──バタン。

考えるよりも先に、扉を閉めていた。



……あれ、おかしいな。

今日の目覚めは悪くなかったはずなんだけど。



「幻覚……?」



もしかしてまだ寝ぼけてる?

っていうか寝ぼけてるんだと思いたい。




だっていつも通りにリビングの扉を開けたら、まさかソファの上に縛られた男がいるなんて思わないでしょ?

全身ロープでぐるぐる巻きにされてるの、どう考えたってウケ狙いとしか思えないんだけど。



「ナナ、

現実逃避するだけ無駄だから入って来なよ」



そうこうしているうちに、部屋から夕陽が顔を出す。

チェリーブラウンの髪の隙間から、いつ開けたのか一粒のピアスが見えた。



「夕陽、わたしいま寝ぼけてるみたいだから脳内を整理してるだけよ。

別に現実逃避してないの。だってあれは現実じゃ、」



ないでしょ、と。

わたしが、言い切るよりもはやく。



「Good morning. 南々瀬」



流暢な発音とともに、

さわやかな笑みを浮かべた男が視界にうつった。



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