【完】こちら王宮学園生徒会執行部
あれ、でも夕帆先輩と夕陽は離婚した両親の元でバラバラだったわけだし。
そのために名字が違ったけど、仲は良い。
どうやら夕帆先輩は夕陽が住んでいたところによく顔を出していたようだし、その逆も然り。
仕事についていけなくなっただけで仲が悪いわけではないという夕帆先輩の言葉通り、家族関係は良好なようだ。
「なに? なんか言いたいことあんの?」
「夕陽といつみ先輩って、幼なじみなの?」
「一応ちっさい頃から知ってんだしそうじゃないの。
っていうか、いまだにその呼び方なわけ?」
新学期からずっと、夕陽は"こう"だ。
何かとわたしに対する言葉やら態度がとげとげしい。
何かしたかなと考えてみたけれど、ちっとも思いつかない。
会話が成り立っている以上、別に嫌われているわけではなさそうだけど。
「その呼び方って……?」
「だから、いつみのこと。
……いまだに先輩って呼んでんの?」
訝しげに眉間を寄せる夕陽。チェリーブラウンに染められた髪が、ふわりと揺れる。
「うん」とそれを見つめながらうなずけば、彼どころか椛と莉央にまでなぜか微妙な顔をされた。
「付き合って卒業するまでならまだわかるけどよ〜。
卒業してんだから名前で呼べば良いじゃねえの」
「しかも一緒に住んでんだろ?
俺なら同棲してる相手から先輩って呼ばれんのすげーしんどいけど」
「その同棲してる相手が彼女なんだからなおさらだろうねえ。
まあ、優しいいっちゃんのことだから文句言わねえんだろうけど〜」
……なんだこの"名前で呼んでやれよ"的な空気は。
別にまったく呼んでないわけじゃない。じゃあいつ呼んでんの?って聞かれたら困るから、余計なことは言えなくて口を挟めないけど。