【完】こちら王宮学園生徒会執行部
頭の中が真っ白になった。
呼吸の仕方まで忘れたみたいに息ができなくて。
「強引に実行案を消された今。
……政府は簡単に、その矛先を変えてみせた」
「、」
「今度は僕が"人質"の番だよ」
「っ……茉文、」
「南々瀬が珠王の姓に変わる前に。
……きみと結婚するのが、僕に与えられた使命だ」
やめて。……お願いだから、もうやめて。
人質という言葉に隠された重みがどれだけのものなのか、わたしは知ってるの。知ってるから。
「……金曜まで、返事は待つよ。
でもきみが出せる答えは、はじめからひとつだ」
「っ、」
ケースから外された指輪が、わたしの左手の薬指に通される。
いつみがくれた愛を誓う指輪にぴったりと添えられたそれは、愛なんて綺麗なものを誓うためのものじゃなかった。
真っ黒になんてなれやしない、醜いものばかりを詰め込んだ大人たちの、策略ひとつ。
……それに巻き込まれた憐れな子どもたちに、希望なんてものは許されなかった。
「彼と話をしてね」
それじゃあ。
たった一言そう告げた茉文は、朝と同じようにあっさりと、この部屋を出て行ってしまう。
その瞬間、わたしはソファに崩れ落ちた。
みんなのこともすっかり頭から抜けてしまうほど、ただただ、いま聞かされた話の衝撃が、大きくて。