【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「南々先輩、」



「……大丈夫よ」



声に出してそう言ってみせるけど、何が大丈夫なのかはもはや自分でもわからない。

ただひとつ、わかることは。……このままわたしがわがままを貫き通せば、まちがいなく、誰かが犠牲になる。



わたしがもし、いつみを選んだら。

茉文はどうなるかわからないし、それこそ、いつみだって……



「……みんなにお願いがあるの」



顔を上げる。

椛、莉央、ルノ、夕陽、ルア、呉羽。



順番に視線で一巡して、口を開く。

……声が震えたりしなかったのは、もうとっくに、自分の中で答えが出ていたから。




「いま聞いた話。

いつみにも夕帆先輩にも、内緒にしておいて。……もちろん理事長やいくみさんみたいに、前回のわたしの件を知っている人にはすべて」



「なに言って……

それじゃあ南々先輩、いまの話、」



「わたしは茉文を捨てられない」



きっぱり。言い切ったわたしに、みんな納得のいかない表情を浮かべる。

だけど苦渋の決断だってことはわかってくれているはずだ。確実に誰もが安全な手段をとるなら、これが最善策なわけで。



「ごめんなさい。

まだ午前中だけど、今日はもう帰るわ」



何か言われる前に、立ち上がってリビングを出る。

……声をかけようにも、何を言えばいいのかわからないって様子だったけど。



黒い扉の外に出て、スマホを取り出す。

履歴を軽く辿れば。いつみやほかのメンバーの名前が並ぶ中に、ひとつだけ登録されていない番号がある。



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