【完】こちら王宮学園生徒会執行部



あの日わたしと、リナさんの元へ訪れたとき。

彼はすでに指示を出して動き、伏線を敷いておいたというわけだ。……だから詳しい手がかりを、わたしに教えてくれなかったのか。



そのときにはじめて、種を蒔いたから。



でも彼の店に行ってから、まだ2日しか経ってない。

……よくそんなにネタが集まってくれたものだと、思わず感心する。



『まあでも、本当はそのネタを使う気はなかった。

……南々瀬が珠王の姓になるまで引き延ばす際に、相手を逆に脅して使うためのネタとして取っておく予定だったんだよ』



どこにいるのか、電話の向こうから水の流れる音が聞こえる。

車が通る音もときどき聞こえるから、おそらくここへ帰ってくるためにどこかを歩いてるんだろう。



『でも今回は緊急事態だったからな。

……キャバ代を経費で落としてたとかいうどうでもいいことから、南々瀬の両親への恐喝まで、一通り使えそうな情報は流した』



「え、」




恐喝って……確かにまあ、うちの両親は脅されていたわけだけど。

どうしてそれが、公になったのか。



『お前の両親は慎重だからな。

恐喝されていたときの音声をちゃんと録音してた。……前回はそれを出すほどじゃなかったからな。証拠をまだ隠し持ってたらしい』



「、」



『でもまあ、俺はデータが存在することをお前の両親から聞いて知ってたからな。

今朝早くに会いに行って、直接貰ってきた』



……敵わない。

茉文を見捨てられなかったわたしのために、わたしも茉文も救える方法で、彼は手を差し伸べてくれた。



『もともとそういう下衆な計画に乗ってるような人間ばかりだったから、今回は、いろいろとネタを引っ張り出せただけだけどな。

本当はマスコミと警察に流せば済む話だったが、それだと意味がない』



「どうして……?

今時、マスコミに流すだけでも十分だと思うけど」



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