【完】こちら王宮学園生徒会執行部
指摘されて、口角を上げる。
「吹っ切れました」と返して、わたしの荷物を受け取る。玄関先でもたもたしていたせいか、彼がわたしの様子を見にわざわざ出てきた。
「……誰かと思えばお前かよ」
「あらよく言うわね。
誰が今日一日仕事を急遽休ませてもらって、いつみに付き合ってあげたと思ってるの?送迎したのはこのあたしよ。お姉様を敬いなさい」
「……それは感謝してるけどな」
「きゃっ、いつみが素直!」
「……めんどくせえ」
心底嫌そうな顔をするいつみにくすりと笑えば。
不意に見つめられて、彼を見上げる。……どくん、と、鼓動が揺れた。
「あいつら早く追い返さねえと」
ちゅ、と触れるくちびる。
「いつまでも居座りそう」と拗ねるように言ういつみの髪に手を伸ばして、やわらかな髪を撫でた。
「追い返しはしないけど。
……わたしも、今日はふたりきりがいい」
「ん。わかったあいつら追い返す」
……いや、追い返しはしないって言ってるじゃない。
ふたりきりになりたいから、文句は言わないけど。
「……ねえ、南々瀬ちゃん」
リビングに引き返していったいつみを見送ったいくみさんが、くすりと笑いながらわたしを呼ぶ。
彼女はわたしの耳元にくちびるを寄せて。内緒話をするように、そっとささやいた。