【完】こちら王宮学園生徒会執行部
・ベサメ・ムーチョ
◆
翌朝。
官僚たちの暴かれた不祥事でニュースは溢れ、それが明るみに出て本当に逮捕されるのも、いよいよ時間の問題だった。
これだけ噂になれば、仕事を辞めざるを得ないだろうし。
危ないことをしたいつみにはまだちょっぴり怒ってるけど、それ以上に感謝はしてる。
「警察には、例のセレモニーのことも話した。
……だから今後事情を聞かれる可能性もあるが、一応、国の危険に関わる話だからな。聞かれたところで公にはならねえのは仕方ない」
ダイニングで朝食を食べながら、いつみが言う。
それに「うん」と返して、スープマグの中身を軽くレンゲで掻き混ぜた。
「それはわたしも公にしなくていいと思う。
もし公になって、世界規模で何かあったら、それこそわたしたちは責任取れなくなっちゃうし」
「ああ。でもまあ、しばらくは落ち着くだろ」
手を伸ばしたいつみに指で頬を撫でられて、なんとなく気恥ずかしくなる。
それでも触れられているのが嬉しくて、すこしだけ擦り寄った。
「わたし、社長の話、ちゃんと受けるわ。
……少し前に受けるって決めたけど、昨日の件があって、今度こそしっかり覚悟決まったの」
「ああ。……好きにすればいい」
やわらかく笑ってくれるいつみ。
日常が慌ただしく戻ってくる。色々あったせいで、まだ落ち着かないことも沢山あるけど、頑張れそうだ。
「南々瀬。今日、俺実家行ってくるから。
すこしだけ夜遅くなる。……大丈夫か?」
「うん、平気よ。ご飯食べてくる?」
「いや、帰ってきてからにする。
一連の件が片付いたなら、お前と急いて結婚する理由がなくなったからな。……話をしてくる」
……そう、か。あの結婚には、やっぱりわたしが安全に暮らすための意味も込められていたのか。
薄々気づいてはいたけど、それならたしかに焦って結婚する必要はなくなった。