【完】こちら王宮学園生徒会執行部



「ねえ、いつみ……」



ベッドの上で寝転んで、彼とは視線を合わせないまま。

外がもう明るいなと小窓に引かれたカーテン越しに空をぼんやりと見つめていたら、うしろから抱きしめられる。



「……ごめんね」



どうやらわたしは健全な女子高校生にはなれないらしい。

生徒会長がこんなんじゃ、風紀もあったものじゃないなと苦笑する。……さて、鋭い生徒会の面々から、どうやってキスマークを隠そうか。



「別れるって言ってごめんね。

……よく考えたら、ちゃんと謝ってなかった」



「……なんだ、そんなことか」



……"そんなこと"って。

結構重要だと思うんだけど、と振り返る。そうすれば愛おしそうに目を細めたいつみが、「ああ、そうだ」と思い出したようにつぶやいた。




本当に、別れると言ったことに対してはもう気にしていないらしい。

……まあ、十分すぎるほどに愛され尽くして、わたしももう満足しているけれど。



「お前の両親に、安全上の問題で海外に行ってもらうって話が出てたんだよ。

……でももう平気になったから、日本に残ってもらうか?」



「え、そうだったの?」



……相変わらずわたしの知らないところで色々進めていたらしい。

でもまあ、わたしの両親は自由奔放な人たちだし。もともと海外に行くという話もしてたから、きっとポジティブに考えてるだろう、と思いつつ。



「んー、詳しいことは両親に任せるわ」



答えたわたしに、いつみが「ん」と返事する。

そうやってまったりしていたら、あっという間に起床時刻を迎えてしまって。



「眠い」と言いつつ、身体を起こす。

……きっとこんな朝も、たまには悪くない。



< 208 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop