【完】こちら王宮学園生徒会執行部
・愛を誓うならあの場所で
◆
──9ヶ月後、2月後半。
わたし、椛、莉央の受験が終了し、あとは結果を待つだけとなった。……とはいえ、合格発表よりも卒業式の方が早い。
そんな、とある日の休日。
家に生徒会のメンバーと夕帆先輩、いつみが揃っていた時。リビングのラックに置かれているCDの中から1枚取り出した椛が、苦笑した。
「このCDさ〜。
カップリングが夕陽作詞のやつだろ〜?」
「ええ、そうよ」
夏に『エイターテイメントレコード』から販売された、例のCD。
A面はミナさんが出演しているCMソングで、カップリング曲は夕陽作詞のものだ。そしてその苦笑の意味を、わたしはちゃんと知っている。
ちなみに、例のレコード会社の名前は『エイターテイメントレコード』。
エンターテイメントと、8を意味するエイトを掛け合わせた名前で、わたしが考えたものがそのまま社名になった。
8プロだけでも大変なのに、エイターの方まで社長になってしまったものだから、本当に大変だ。
……やりがいはあるんだけどね。
「俺もテレビで宣伝してた時びっくりしたよ、それ。
夕陽、『好きだった人に向けて書きました』って思いっきり言ってたよね」
呉羽にそう言われた張本人は、「社長に許可もらったからね」としれっと返しているけれど。
わたしもはじめてその曲を聴かせてもらった時、歌詞を見て驚いた。
「おかげでファンの間で、
"NANAの元カノは年上"って噂されてるらしいぞ」
「夕帆先輩、絶対夕陽の活動ちゃんとチェックしてますよね……
まあ、この歌詞見たら、さすがにバレますよ」
『Marry』とタイトルがついたその曲。
安直に言うなら、好きだった女の子に「結婚おめでとう」と伝えるバラードなのだ。……うん、誰のことなのかはもう分かるわよね。
「いくつか案出したら、それが一番いいって言われたんだよ。
まあ当然だよね。それっぽい言葉を並べた曲より俺の本心並べた曲の方が、現実的だし」
ネットでも、"NANAに愛されてる女の人が羨ましい"という声が多数上がっているらしい。
エイターの社員さんから教えてもらったけど、まさか「その曲のモデルはわたしなんです」とは言えなかった。