【完】こちら王宮学園生徒会執行部

・愛を誓うならあの場所で








──9ヶ月後、2月後半。

わたし、椛、莉央の受験が終了し、あとは結果を待つだけとなった。……とはいえ、合格発表よりも卒業式の方が早い。



そんな、とある日の休日。

家に生徒会のメンバーと夕帆先輩、いつみが揃っていた時。リビングのラックに置かれているCDの中から1枚取り出した椛が、苦笑した。



「このCDさ〜。

カップリングが夕陽作詞のやつだろ〜?」



「ええ、そうよ」



夏に『エイターテイメントレコード』から販売された、例のCD。

A面はミナさんが出演しているCMソングで、カップリング曲は夕陽作詞のものだ。そしてその苦笑の意味を、わたしはちゃんと知っている。



ちなみに、例のレコード会社の名前は『エイターテイメントレコード』。

エンターテイメントと、8を意味するエイトを掛け合わせた名前で、わたしが考えたものがそのまま社名になった。



8プロだけでも大変なのに、エイターの方まで社長になってしまったものだから、本当に大変だ。

……やりがいはあるんだけどね。




「俺もテレビで宣伝してた時びっくりしたよ、それ。

夕陽、『好きだった人に向けて書きました』って思いっきり言ってたよね」



呉羽にそう言われた張本人は、「社長に許可もらったからね」としれっと返しているけれど。

わたしもはじめてその曲を聴かせてもらった時、歌詞を見て驚いた。



「おかげでファンの間で、

"NANAの元カノは年上"って噂されてるらしいぞ」



「夕帆先輩、絶対夕陽の活動ちゃんとチェックしてますよね……

まあ、この歌詞見たら、さすがにバレますよ」



『Marry』とタイトルがついたその曲。

安直に言うなら、好きだった女の子に「結婚おめでとう」と伝えるバラードなのだ。……うん、誰のことなのかはもう分かるわよね。



「いくつか案出したら、それが一番いいって言われたんだよ。

まあ当然だよね。それっぽい言葉を並べた曲より俺の本心並べた曲の方が、現実的だし」



ネットでも、"NANAに愛されてる女の人が羨ましい"という声が多数上がっているらしい。

エイターの社員さんから教えてもらったけど、まさか「その曲のモデルはわたしなんです」とは言えなかった。



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