【完】こちら王宮学園生徒会執行部
にっこり。
笑うリーダーを見て、舌打ちしたくなった。
なにが"大人な恋"だよ。
……大人だったらもっと上手くやってた。だからってどうなってたとかそんな難しいこと、わかんないけど。だって俺子どもだし。
「最近、ナナは楽しそうだね」
「……別に、いつも通りでしょ」
背伸びして無理するのはもうやめた。
コーヒーもブラックを飲むのはやめたし、今日も手元にあるのはキャラメルラテ。開けたのはすこし前のはずなのに、ピアス穴が疼いた気がした。
「ううん。可愛くなった」
「……馬鹿にしてんの?」
仮にも年上のリーダーにこんな口のきき方するなんて、俺も相当なめてるなとは思うけど。
放たれた言葉が納得いかなくて、口元をゆがめる。
「違うよ。
無理してなくて、等身大の生き方してるねって」
「………」
「ちゃんと高校生してるのが、いいなあって思っただけだよ。
でも。背伸びしてたナナも、いまのナナも。引き出してあげられるのは、結局あの子なんだね」
「……ナナは関係ないよ」
キャラメルラテに手を伸ばして、ストローを咥える。
その拍子にぴろっとメッセージを受信したスマホに触れれば、『夕陽は参加できそう?』という呉羽からのメッセージ。
ナナの誕生日が夏だから、祝うにしてもいちばん優先しなきゃいけない俺の予定を聞いてくれてるらしいけど。
……ぜったいあいつら、俺のことアイドルだと思ってないよね。