【完】こちら王宮学園生徒会執行部
・そういえば
◆
「そういやさ~、」
ぽつり。椛が切り出したのは、わたしたち3人が無事に王学を卒業したあとのことだった。
莉央と椛が我が家に遊びに来ているのだけれど、いつみは珠王の用事で家を空けていて、今はいない。
ちなみに無事、3人とも大学には合格した。
そのお祝いとあって、それぞれ手元に『Juliet』のケーキ。
「踏み込んだこと聞くけど。
南々ちゃん、まさか妊娠してたりする?」
ふわふわの髪が、彼の動きに合わせて揺れる。
オレンジベージュの毛先の動きはとてもやわらかくて、まるで踊っているみたいだ。
「……え、してないけど」
籍を入れたのが、つい三日前。
それだって他人から見ればかなり焦った入籍だというのに、子どものことなんて頭に微塵もなかった。……そりゃあ、密な夜もあるけれど。
「ああ、さすがに違ぇか。
まあ、そうだとしたら言ってくれてるわな」
「うん、そうだと思う」
「いや~、なんかしれっと流したけどいっちゃんが"新居"って言ってたから。
もしかして子どもが生まれるから、マイホームとか急いで考えてんのかねえって思ったり」
「ああ……」
確かに、わたしたちが幼い頃に出会った場所が王学であったことが判明したあの日、彼は新居がどうのって言っていたけど。
残念ながら、そんな予定は全くもってない。
「さすがにねーだろ。
大学通いながら社長として働くのわかってんのに、そこで妊娠とか狂気の沙汰だろ?」
「まあ、さすがに鬼畜だわな~」