【完】こちら王宮学園生徒会執行部







いくみに当たってしまって、約1週間。

新学期を迎えるにあたって理事長秘書は忙しいようで、いくみから連絡が来ることもない。ひどいことを言ってしまった申し訳なさもあって、俺からも連絡できずにいた。



「……で、別れるのか」



「……いくみがそれを望むなら、しゃあねえかな」



めずらしくいつみが夕飯に誘ってきたかと思うと、新婚夫婦の部屋にはふたり分のオムライス。

彼女の姿が見当たらなくて問いかければ、「出掛けた」と一言。……出掛けた?この時間から?



「よく許可したな」



「……飯食って適当に帰ってくるんだと」



それなのに俺といつみの分の晩飯作ってから出掛けてんのか、あの子は。

……ほんと、こいつら夫婦は、お互いのこと大事にしてんな。




「いくみがめずらしく落ち込んでたぞ。

……やっと付き合えたくせに、別れるか迷ってた」



「………」



「……そんな顔すんのに、

"しゃあねえ"なんてよく言えたもんだなお前は」



じくりと胸の内を、抉られる。

……別れたい、わけじゃない。



むしろ俺はずっと、一緒にいたくて。

ようやく、隣に並べるだけの資格を得たのに。



「今日は酒禁止な」



「冷てえな」



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