【完】こちら王宮学園生徒会執行部
「え、なんでここにいるの?」
「帰るぞ」
「やだ、まだ飲み足りないもの」
「じゃあウチで飲めばいい」
いくみが泥酔しているのは嘘。
男に言い寄られてるのは、あながち間違いじゃなさそうだけど。……でも大事なのはそこじゃない。
「……帰りましょう、いくみさん」
ふわりと笑った南々瀬ちゃんが、いくみを促してくれる。
きっと彼女は、俺といくみのことを仲直りさせたかったんだろう。だから嘘をついてまで、俺の気持ちを確かめさせたかった。
「……この間はごめん、いくみ」
南々瀬ちゃんが、車の後部座席に乗り込む。
いつも乗ってるであろう助手席は、いくみに譲ってくれた。
「……しらない」
「………」
「何のために恋人になったのか分からない。
この間言ったように思ってるなら、ただの都合のいい女だって言われた方がよっぽどマシよ……」
つぶやくいくみの声が、徐々に小さくなる。
本当は抱き寄せたかったけれど運転中に出来るはずもなくて、左手を伸ばしていくみの頭に乗せた。
「……好きだから一緒にいるんだろ」