【完】こちら王宮学園生徒会執行部
南々瀬ちゃんがいるのは分かってるけど。
今ちゃんと言っておかないと、もう繋ぎ止められないような気がした。気まぐれなその瞳を、まだ、そらさないでほしい。
「……好きな相手にあんなこと言う?」
「……ごめん」
「そう思うなら他にいくらでも男作ってやるわよ」
「だめ」
とんだ馬鹿げた独占欲だとは思うけど。
これ以上、誰かに触れてほしくない。
右手を絡め取るように握って、マンションまで帰る。
車をおりてエレベーターに乗り込み、南々瀬ちゃんに「ごめんな」と伝えて、いつみの車のキーを返した。その際に見えた左手の薬指には、綺麗な輝きを放つ結婚指輪。
「いえ。……仲直り、してくださいね」
年齢的には俺もいくみもこの子より歳上なはずなのに、なんだか南々瀬ちゃんの方が大人びてるように感じる。
お礼を言って彼女とエレベーターで別れたあとも、いくみはずっと黙り込んだままで。
「……いくみ」
部屋に招き入れ、玄関の鍵をかける。
ガチャッと金属音がした直後に、いくみのことを強く抱き締めた。それからもう一度「ごめん」と囁く。……いくらなんでも、彼女にひどいことを言い過ぎた。
「大事な彼女だと思ってる。
……もっと優しくしたいのに、余裕なくてごめん」
「……うん」
「好きだよ」