【完】こちら王宮学園生徒会執行部
番外編
・sisters
◆
「あら?」
それは、とある平日の17時のこと。
昼過ぎに大学の授業を終え、そのまま電車に乗って向かった先はエイターのオフィスビル。
新レーベルから初の販売を迎えた『Fate7』の売り上げが好調であることや、社内状況の報告を含む会議を約2時間。
それを終えてスマホを確認すると、いくみさんから不在着信が入っていたことに気づく。
……なんだろう。
いくみさんが直接わたしに連絡してくるってことは、夕帆先輩と何かあったのかもしれない。
エレベーターでエントランスに下り、周囲の社員と挨拶を交わしながらスマホを耳に当てる。
数コールのあと、『あ、南々瀬ちゃん?』と聞こえてきた声は、予想に反していつも通り明るかった。
「あ、いくみさん。お疲れ様です。
お電話頂いてたので掛け直したんですけど、いまお時間大丈夫ですか?」
エントランスを出て、駅に向かって歩き出す。
日によってはいつみが車で迎えに来てくれるんだけど、今日は彼も忙しいことを知っていたから断った。
『お疲れ様。ちょうど手が空いてるところだから大丈夫よ。
ごめんね、大したことじゃないんだけど。……来月のゴールデンウィーク、どこかで2日ほど休み取れたりしない?』
「ゴールデンウィークですか?」
頭の中で、今後のスケジュールを思い出す。
ゴールデンウィーク中、大学は休みだし。8プロもエイターも、長期連休中だから会議が入っていたのはそれよりも前のはず。
「今のところ大丈夫だと思います。何かあったんですか?」
『あのね、どうやら八王子グループが新たに沖縄に高級ホテルをオープンするらしいのよ。
それで、オープン前にマスコミや関係者のみ宿泊できるチケットを理事長からもらったの。一緒に行かない?』
沖縄に、高級ホテル。
……知っていたことだけれど、相変わらず八王子グループの事業展開は留まることを知らない。
そしていくみさんは、どうやらわたしを誘ってくれるらしい。
左手薬指の煌めきは、彼女とわたしが姉妹である証拠だ。